その朝は、少し遅めに家を出た。遅刻はするだろうが、フォルテールの歴史など、興
味もなかった。それに、ピオーヴァは遅刻に対して寛容だった。その代わり、実力を示
すことの出来ない者に対しては、そうではなかったが。
一時限目が終わるまでどこで時間を潰そうかと迷っていると、校舎に入ってすぐの所
に二つの人影を見つけた。女生徒と男子生徒の二人組らしいが、かすかに見える女生徒
のリボンの色から、俺と同じ新入生だとわかった。自分のことは棚に上げ、入学早々遅
刻する新入生の顔を眺めてやろうと近づこうとしたが、すぐにそれがクリスとトルティ
ニタだとわかって足を止める。
つい数日前の出会いのせいか、あまり良い印象はなかった。そのまま反対方向へ歩き
出そうとしたが、トルティニタのおかしな行動が目に入って、再び立ち止まった。
トルティニタは、鞄から取り出したタオルで、クリスの頭を拭いていた。学院に来る
途中で川にでも飛び込んだんだろうか?
「よう、クリス。それにトルティニタ」
どうせ時間を潰すのなら、わずかながらでも話したことのある知り合いと、と思い直
して声をかけると、トルティニタは振り向きざま、強ばった表情で俺をにらみ付けた。
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